【中盤の配置攻防】セリエA 第1節 ウディネーゼ×ミラン(1-0)
はじめに
ジャンパオロ・ミランの船出となった試合。昨季まで率いていたガットゥーゾが辞任、より戦術的、より技術的にチームを成長させ、財政的なゴタゴタの中でもしっかりとマネジメントできる監督を、という中で選ばれたのがマルコ・ジャンパオロ。自他ともに時間がかかるという認識のもと始動したチームは、プレシーズンでは低調な出来。「時間がかかる」という文言は一昨季のモンテッラも執拗に訴えていたことで、結果的にはサポーターも早々に我慢ができなくなり、モンテッラもチームを作れなかったという経緯があり、すでに怪しげな空気も漂う。内容とともに最低限の結果が求められるチームでジャンパオロはうまくチームを成功に導いていけるのか。
フォーメーション
ミランはプレシーズン同様、ジャンパオロお馴染みの4-3-1-2を採用。アンカー予想だったビリアは怪我で招集外、新戦力は軒並みコンディション不良という中で、昨季までの戦力が不慣れなポジションを努めなければならないという事情もあり、このようなスターティングメンバーに。注目はモンテッラ、ガットゥーゾともにそのポテンシャルの高さを評価して中央での起用を試すも、一度も成功したことがないスソのトップ下起用。
トゥドール監督のウディネーゼは3-5-2を採用。エースであるデ・パウルはベンチスタートとなっている。開幕節でミランと当たることに関して肯定的に捉えていたトゥドールは、完成度の低いミランに対してどのように戦うのか。
この記事はジャンパオロの基本的なプレーモデルを踏まえた分析になります。
前半/ミランのボール保持
まず4-3-1-2対3-5-2はシステムの噛み合わせ的にあまり相性がよくない。FWは2人に対して3人、中盤はそれぞれ同じポジションに相手選手もいて、アンカーはFWの1人に消されてしまう。噛み合わせの時点で、中央でフリーマンを見つけ出すことは難しくなっている。
この噛み合わせの悪さにジャンパオロはMEZの動きで対応する。前半、ボールサイドのMEZは頻繁に横の動き(SBの位置まで降りることが多かった)で、ミドルゾーンでコンパクトなブロックを形成してスペースを埋めているウディネーゼのIHを釣りだそうと試みる。その際SBは高い位置でWBをピン留めさせておく。中央にパスコースを作り出したら、ピョンテクとカスティジェホ、あるいはスソが動いて楔を受ける動きをみせる。
ジャンパオロ・ミランの中央アタック。MEZの横の動きでウディネーゼのIHを中央から釣り出してスペースとパスコースを提供。最終ラインから楔のパスで中央エリア攻略を目指す。スソがチャルハノールにボールを渡せていればよりチャンスになった。 pic.twitter.com/akjFMGsaNH
— k (@calciostyleoe) August 29, 2019
前半はパケタがパスコースを空け、ピョンテクに楔を当てるポストプレーによってボールの前進を試みたが、ピョンテクがベカンを背負ってプレーすることができず、うまくいかなかった。また味方同士の距離感も悪く、このあたりはまだジャンパオロのフットボールが馴染んでいないであろうことが見て取れた。
前半/ミランのボール非保持
ミランは前線からのサイド限定プレッシングでボール奪取ゾーンへの誘導を試みるが、ウディネーゼも対策を用意してくる。ウディネーゼの中盤3枚は左右非対称にIHを配置して、スソとパケタに守備の潰しどころを惑わさせることを目指す。このウディネーゼの中盤の配置は、前半こそ効果的ではなかったものの、後半はこれにやられることになる。
前半のミランのサイド誘導プレッシング対ウディネーゼのIHの配置。前半は効果的ではなかったものの、後半はこれにやられることになる。 pic.twitter.com/EdYQu2WfUa
— k (@calciostyleoe) August 29, 2019
後半/ミランのボール保持
後半もMEZが横に開いて中央にスペースを作り出すやり方は変わらず。後半スタート時はベカンに勝てないピョンテクをカスティジェホと配置変更して、カスティジェホのスピード勝負に持ち込もうとしたが、うまく攻めれず結局もとの形に。攻守でミスが目立ち始めたボリーニに代えてケシエを投入することで、右サイドをカラブリア、ケシエ、カスティジェホ(本当はスソも)のいつものメンバーを近くに配置することで連携面での向上を狙ったがこれも効果的ではなく。カスティジェホが降りてCBを釣りだし、ケシエがそのスペースに飛び込む攻撃をみせるがこれもうまくいかず。オープンな展開に備えてカスティジェホに代えてレオンを投入、裏へのスピードを期待したがこれも効果的ではなく。最後はスソをワイドに置くいつものスタイルでなんとかゴールをもぎ取ろうとしたが、結局点は取れなかった。
後半/ミランのボール非保持
後半のミランは守備がボロボロだった。前半こそ、まだ中央エリアへのパスコースを閉じる意識が見られたが、後半はその意識が薄れ危機感も感じないままウディネーゼのIHの配置にやられ放題。
後半は中央を閉じる意識が一気に薄れ、ウディネーゼのIHの配置にやられ放題に。中央を経由して右から左へのサイドチェンジを多用、フォファナに何度もチャンスを作られる。 pic.twitter.com/y6An4h6FJM
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パケタがWBに引っ張られ、結果的にマンドラゴラにサイドチェンジを許しチャンスを作られる pic.twitter.com/iOoS9x46tS
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スソが中央を閉じれずに、これもサイドチェンジによってチャンスに pic.twitter.com/K1jfYah4CO
— k (@calciostyleoe) August 29, 2019
中央を閉じれず、サイドチェンジによってフォファナに何度もチャンスをつくられていたが、トゥドール監督はこのフォファナのポジションにエースのデ・パウルを投入することでより良質なチャンスを作り出そうとする。が、そのようなチャンスを作り出す前に、投入直後のデ・パウルが蹴るCKでミランは失点。結果的にこれが決勝点となった。
おわりに
前半のお互い手詰まりな状況から、セットプレーか後半のオープンな展開が勝負の分かれ目だろうと思っていたが、やはりセットプレーからやられてしまった。ミランは攻守において完成度が低く、ジャンパオロのフットボールの浸透はまだまだ時間がかかりそう。なによりスソは攻守において(特に後半の守備)低調な出来。やはりスソのトップ下は難しいのでは。ただジャンパオロ色は出ているので、あとはどれくらいはやくシステムを決めてそのスタイルを浸透できるかが成功のカギになってくる。次節はシステム変更があるらしいので、またしっかりと観ていきたい。
ウディネーゼはトゥドール監督が用意してきたIHの配置が後半に活きた。フォファナのポジションでチャンスを作り出せているとみるや、そのポジションにデ・パウルを投入したのも見事だった。上位を目指すチームではないが、やはり今年もめんどくさい相手である。