【エースを活かす配置の最適解を求めて】セリエA 第2節 ミラン×ブレシア

はじめに

ジャンパオロ・ミランの2試合目。前節はジャンパオロの色こそ出たが、その完成度はまだまだ低く、トップ下に入ったスソは攻守において低調なパフォーマンス。点を取れずにセットプレーでやられる痛い黒星スタートとなった。試合後、システムの変更が示唆されたが、これまでのキャリアでジャンパオロは4-3-1-2システムにこだわり続けた男でもある。そんなジャンパオロに1試合でシステム変更を匂わす発言をさせるとは、さすがミラン、というところであった・・・。が、実際試合に入ってみれば、やはりそれは変則的な4-3-1-2であった。これはジャンパオロの妥協か、チームの最適解か。

フォーメーション

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ミランは表記上は4-3-2-1ともできそうだが、ジャンパオロはスソをFWでプレーさせたと試合後に語っており、守備体系も4-3-1-2であったため、ここでは4-3-1-2表記にする。新加入のベナセルがスタメンに入り、前節アンカーでプレーしたチャルハノールは得意のMEZに配置。右サイドにカラブリア、ケシエ、スソを置いて、昨季までの連携を活かす。完全に構想外にされていそうだったアンドレ・シウバのスタメン起用は驚いた。

昇格組であるブレシアも4-3-1-2を採用。前節カリアリ相手にPKでの1点を守り切って勝利したが、相手がアウェイでのミランともなればそう簡単にはいかないはず。

 この記事はジャンパオロの基本的なプレーモデルを踏まえた分析になります。

 

 前半/ミランのボール保持

 この試合は表記システムの噛み合わせ的に両チームとも4-3-1-2を採用したミラーゲームになるかと思われたが、そんな噛み合わせをジャンパオロは選手の配置によって悉くズラしていく。後ろからのビルドアップは2CB×2FW、アンカー×トップ下の数的同数でがっつり噛み合わせが合うため、空いているSBに逃げたくなるが、ミランはケシエがベナセルの横に落ちることで4対3の状況を作り出す。これに対してブレシアのMEZは付いていかず、SBへのプレスというタスクも与えられていたため、カラブリアもケアしながらケシエもなんとなくみる、という微妙な位置にいることが多かった。チャルハノールは中央寄りに立ち、FW起用のスソは常にお得意の右のタッチライン際に配置。カスティジェホはスソのいた位置の近くへ。基本的にはスソのいる右サイドからの攻撃を試みる。

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ゴールキックの時にはベナセルが上がり、ケシエとチャルハノールの2人が落ちるという形をみせた。

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ミランの攻撃はスソのいる右サイドをケシエ、カラブリア、カスティジェホも絡んだオーバーロードでのコンビネーションによる崩しと、左サイドのアイソレーションでスソのサイドチェンジからR・ロドリゲスがボールを持ち、アンドレ・シウバやカスティジェホが相手SB裏スペースへ飛び込むという形が基本。右サイドのスソ、ケシエ、カラブリアは昨季まで4-3-3の右サイドを担当していたので選手間の連携はしっかり取れている。

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前半のミランは相手CB-SB間をズラして、スペースを作り出してそこに飛び込むという形で何度かチャンスは作った。チームでいちばんのチャンスメーカーであるスソを右サイドでワイドに張らせることを前提にしているため、右のオーバーロードから左は速くシンプルな攻撃で崩していくことを目指していた。サイドスペースへの飛び込みとそこからの展開を考えると、ピョンテクではなくアンドレ、右でオーバーロードに参加してから左で飛び込む運動量を持っているカスティジェホがトップ下という選択は悪くない。そしてパケタはまだチャルハノールほど細かいポジショニング修正ができず、トップ下起用は前節のようなトップ下の役割であればまだあり得るが、スソを前提としたこの試合でのトップ下の役割はおそらく厳しい。さらにコンディション的にも不安があるためベンチスタートは十分理解できる。こうしてスタメン選考の理由が試合を通して少しずつ明らかになってくる。

 

 

結果的には右サイドでのコンビネーションでスソがスペースに飛び出し、その後のスローインからスソのクロスをチャルハノールが合わせてミランがこの試合の決勝点となる1点を取った。

 

前半/ミランのボール非保持

前節はミランのサイド限定プレッシングによるボール奪取ゾーン誘導が、ウディネーゼの配置とトップ下に入ったスソの残念な出来(中央アンカーへのコースを切れずプレスの強度もなくやられ放題だった)によって崩壊、特に後半はボロボロだったが、この試合はスソをFWとして起用しているため守備負担を軽減できる。スソの代わりにトップ下に入っているカスティジェホは運動量も豊富で守備意識も高い。ミランはミラーゲームによる噛み合わせを配置でズラして攻撃していたが、ブレシアはそのままビルドアップを試みる。それに対してこの試合のミランはマンマーキング気味の高い位置でのプレッシングによってボール奪取を試みる。これがうまくハマってブレシアは後ろからボールを繋ぐことがなかなかできなかった。攻撃時には噛み合わせをうまくズラし、守備時には噛み合わせをうまく使ったジャンパオロだった。

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後半/ミランのボール保持

 後半からブレシアは明確に前にでてくる。ミランのドンナルンマまでプレッシングを行ってきたため、後方でバタつく展開に。それならばと、あえて中盤を飛ばしてFWへのロングボールを蹴り始め、試合は少しずつオープンな展開になっていく。ミランアンドレポストプレーの役割を担うような展開になったため、ピョンテクを投入。チャルハノールに疲れが出てきたらパケタを投入。パケタがワイドに開くことでピョンテクへの楔を入れられるシーンが出てきた。そしてそれまでプレーの質自体は決して高くなかったが、攻守に献身的に動いていたカスティジェホに代えてボリーニ。なんとか試合を締めた。

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後半/ミランのボール非保持

 後半も守り方は同じ。1-0というスコアだったこともあり、各ポジションの運動量を選手交代などで維持しつつ、オープンな展開になっても最後のところでギリギリ失点を防いだ。

 

 おわりに

 ウディネーゼ戦から、今できることをしっかりと修正してきた印象。スソのポテンシャルを活かすためにサイド偏重ではあったが、オーバーロードアイソレーションでの崩しはジャンパオロのスタイルを踏襲。スソを右に置くことを前提としたスタメン選考とその配置は見事だったと思う。各選手のポジショニングの悪さは、そのままジャンパオロ・スタイルの浸透してなさだと思うからこれから少しずつ改善していけるだろう。ただ、この試合のような戦い方は必ず早い段階で限界がくるのとピョンテクとパケタを活かしきれない部分はあるので、このようにチームにいる選手の特徴を出せる配置を考えつつ、少しずつジャンパオロのゲームモデルの浸透を目指していってほしい。もちろん、誰もが我慢が必要なのは明らかだ。

 

 第1節 ウディネーゼ

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