【ズラしズラされて生きるのさ】セリエA 第12節 ユベントス×ミラン

・はじめに

前節ラツィオにも負け、降格圏のほうが近い順位にいるミラン。ここからのユベントスナポリパルマボローニャとの4試合の結果次第では残留争いに巻き込まれながらシーズン前半を終えることになるため、なんとしてでも結果が欲しいところ。先がないハチャメチャフリーダムフットボールから1試合でもはやく抜け出してほしい。

 

・フォーメーション

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ミランは前節同様ケシエではなくクルニッチをスタメン起用、スソもスタメン復帰して4-3-2-1を採用。ユベントスはいつも通り4-3-1-2を採用、ロナウドイグアインの2トップと中盤を運動量で繋ぐためベルナルデスキがトップ下にはいった。

 

・前半/ミランのボール保持

ミランは前節ラツィオ戦からクルニッチを起用しているが、それと同時にSBアシンメトリー型の3-2ビルドアップからオーソドックスな4-1あるいは4-2ビルドアップへと変更。これまでは常にテオが高い位置を取り続けることによる背後のスペースをケシエの運動量で補う構造だったが、オーソドックスな形に戻したことでトランジション時のスペース管理はある程度楽になった。ラツィオ戦では後ろから繋ぐビルドアップは避けて前線にロングボールを送り、マンマーキング気味のプレッシングによってショートカウンターでゴールを目指そうという意図が見えたが、うまくハマったのは前半20分間のみで、結果的にはこの殴り合い上等フットボールの悪いところが出て敗戦した。しかし、この試合のミランは後ろから繋ぐセットオフェンスにおいて、再現性のある攻撃をみせた。

ユベントスは4-3-1-2でミランのCBと2トップ、アンカーのベナセルとベルナルデスキを噛み合わせてくる。SBに対してはIHがプレスをかける形だが、ミランはクルニッチのポジショニングによってこの噛み合わせをズラしていく。クルニッチが降りて4-2ビルドアップの形をとることで、ベンタンクールはテオとクルニッチの2人をケアすることを求められる。ミランは前半、このテオとクルニッチでビルドアップを安定させることに成功した。

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ミランはテオとクルニッチでビルドアップを安定させた後、テオ、クルニッチ、チャルハノールによるチャンネル侵入アタックとサイドチェンジによるワイドな攻撃をみせる。

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チャルハノールとクルニッチのチャンネル侵入→サイドチェンジからワイドな崩しをみせるこの試合でいちばんの素晴らしい攻撃もみれた。

 

 ミランはこのビルドアップからのチャンネル侵入、ワイドアタックによってユベントス相手に主導権を握りながら試合を進めることができたが、ゴールが生まれなかったのが痛かった。

 

・前半/ミランのボール非保持

 ボール非保持時はこれまでと特に変わらず、マンマーキング気味のプレッシングだが、この試合はユベントスの4-3-1-2に対して、ミランも4-3-1-2気味でプレスをかける。SBに対してIHが出て行ってプレスをかけるのはミランも同じで、IHが出ていったあとのボールサイドの相手IHに対してはアンカーのベナセルが出ていく。

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ユベントスはビルドアップの逃げ道としてロナウドやベルナルデスキがサイドに流れてボールを受けることで前進。ロマニョーリを動かしてズレをつくり、イグアインが侵入するパターンで崩していくが、これはジャンパオロのミランがやりたかった攻撃パターンのひとつで、複雑な気分になる。

 

 

両チームともチャンスはつくるが得点決まらずに前半を終えた。

 

・後半/ミランのボール保持

 前半はいい攻撃の形を見せていたミランだったが、そのアグレッシブなプレッシングによって前半のうちにスタミナ切れになるのはいつものパターン。前半にみせていたチャンネル侵入の動きがなくなり、それによってユベントスの守備ブロックを乱すこともできず、時間もスペースも生まれないからサイドチェンジを使ったワイドアタックもみられなくなる。これまでのミランと全く同じような攻撃になってしまう。

 

こうなると前半に比べてゴールも遠ざかり、結局無得点で試合を終えた。

 

・後半/ミランのボール非保持

プレッシングの持続性が保てなくなるとユベントスに簡単にボールの前進を許し始める。さらにロナウドに代えてディバラを投入されたことでリンクマンとしてスムーズにボールを循環されるようになり、ベルナルデスキに代えてコスタ投入で、ドリブルでも崩されるようになる。

ミランはクルニッチに代えてボナベントゥーラを投入して4-2-3-1へとシステム変更。ボナベントゥーラにはCBへのプレスとピャニッチを消すことを求められたがベンタンクールが降りてくるなどされ機能しなかった。最後はサッリのユベントスが練習してる通りの菱形で崩されて失点。ユベントス相手に良い試合をしたが、結局敗戦となった。

 

・おわりに

ピオーリ就任後、はじめてチームとして再現性のある攻撃ができた試合で、これまでのようなハチャメチャフリーダムフットボールではないものが見られたことは満足できる。これがユベントスという相手を特別に意識した結果で、刹那的でないことを祈るしかない。それにこのプレッシング構造を続けることで、前半で試合を終わらせなければいけない展開になってしまうのも問題である。リトリート守備もかなり脆い。問題点はまだまだ山積みだが、ようやくチームとしての良い形がみえたのは監督、選手ともに手ごたえを感じているはずで、代表ウィークを挟んでの次節以降も継続してチームの成長が見られればうれしい。またハチャメチャフリーダムフットボールに戻っていたら、もうゲームオーバーだ。