イタリア、W杯出場できず
ロシアW杯予選プレーオフでスウェーデンに合計0-1で敗れたイタリア代表は、2018年ロシアW杯に出場できないことが決定しました。
もはや悲しみしかありません。イタリアがW杯に出場できないなんて、最悪にも程があります。スペインに完敗したあたりから「これ、ちょっとやばくない?」と思っていたので、できるだけ静観していたのですが、まさか本当に出場できないとは。結果を出せていないのはモンテッラも同じですが、ヴェントゥーラにはほとんど希望を持てませんでした。総合的なテクニックでスペインやドイツに劣っているのは事実ですが、それでもクラブで活躍する個性ある選手たちを間違った起用法で混乱させて、まったく機能しないシステムを修正できなかったのは非常に残念です。チームを作り上げていく時の大前提として、チームの強みと弱み、選手同士の関係性を理解していちばん機能するシステムを当てはめることが大切で、特に代表監督であればそこが最も大きな仕事のはずです。本当に残念です。
これからは長期的な視点でカルチョの復権を目指していくべきだと思います。スペインにしてもドイツにしても、一度挫折を味わったからこそ、協会、監督、選手、国民全員が団結して今があります。W杯に出場できない悔しさを前進していくための糧にしてもらいたいです。
ミランにいる若手選手たちも将来的にイタリア代表で活躍する姿を見せてもらいたいところですが、まずはクラブで全力でプレーをして、焦らずに成長していってもらいたいですね。
最後に、スウェーデンはW杯出場おめでとうございます。見事なパフォーマンスでした。
W杯予選プレーオフ1stレグ クロアチア - ギリシャ
クロアチアは予選グループステージで対トルコ戦を観たときは、あまりレベルの高い試合ではなかったけど、プレーオフにまわったギリシャとの試合はとても良いサッカーだった。ゴールを決めたカリニッチも素晴らしいパフォーマンスだったけど、やはりモドリッチのプレーが最高だった。セリエAでもイタリア代表でもないけど、暇になったしクロアチアの2点目のシーンだけをピックアップしてめちゃめちゃ簡単になんとなく書いてみた。
・カリニッチを活かすモドリッチのポジショニング
クロアチアはこの試合、ギリシャの左サイドを何回も崩すことに成功していますが、モドリッチのポジショニングが鍵となっていました。
トップ下のモドリッチは攻撃時、かなり自由に動いていました。ヴルサリコの攻撃性を考えると、彼を高い位置にポジショニングさせたいので、このシーンではモドリッチがSBの位置に下がってビルドアップに参加しています。ちなみに右サイドでモドリッチ、ヴルサリコ、クラマリッチ、カリニッチが密集することで逆サイドで1対1に強いペリシッチを浮かせることができています。試合中はさらにペリシッチも中に絞り、両SBをフリーにさせることができていました。
クロアチアの先制点はモドリッチとカリニッチのプレスによってPKを誘発して、モドリッチがPKを決めましたが、2点目もカリニッチとモドリッチの関係性が起点となった右→中→左→中という完璧な崩しでした。
قبل كالينتش قبل قليل مع منتخب بلاده كرواتيا كاملا HD هدف جميل بالكعب 😍
— TVACM (@TVACM) 2017年11月9日
كالينتش V اليونان pic.twitter.com/B6mKRdUPUS
カリニッチがポストになり、左サイドに展開され、最後はクロスに対してカリニッチが再び反応して決まったゴール。今回はカリニッチにボールが入った瞬間に注目しました。
下りてきてボールを受けようとするカリニッチに対して、中央を使われたくないギリシャは6番のツィオリスがしっかりと付いているように見えます。ただその近くにモドリッチもいるのがポイントです。
当然ギリシャはモドリッチにボールを持たれると怖いわけで、特にこの位置でモドリッチをフリーにさせたらギリシャからしたら一気にピンチ、クロアチアからしたら大きなチャンスになります。そんな存在のモドリッチが、カリニッチの横でフラフラと立っていることで、カリニッチにボールが入った瞬間、ツィオリスはモドリッチのほうに動いてしまっています。代わりに22番のサマリスがボールを奪いにいきますが、カリニッチの得意技であるワンタッチのポストプレーによってペリシッチにボールが渡り、そこからサイドに展開されました。最後のゴール前でもクラマリッチとペリシッチによってカリニッチはフリーでニアに飛び込めています。モドリッチのただ立っているだけに見えるポジショニングによって、カリニッチの質的優位を活かし、チーム全体で左サイドをフリーにすることができていたシーンで、ギリシャの脆さもありましたが素晴らしいゴールでした。(試合のハイライト動画等ではボールがサイドに渡って仕掛けるところからシーンが始まるものばかりだったので、少し勿体無いような気がします…)
僕がカリニッチとミランに期待しているプレーのひとつが、このようなゴールです。チームとしての出来が悪いとストライカーのゴール数も少なくなるのは、今シーズンのベロッティを見てもわかるように当たり前なので、少しでも早くチームとしての練度を上げていって、カリニッチだけでなくA・シウヴァにもクトローネにもたくさんのゴールを決めて欲しいですね。
そしてモドリッチは本当に素晴らしい選手で、単純なテクニックだけでなくポジショニング、プレスの質などほぼすべてがハイレベルで異次元。幼少期からのミラニスタという話もあるので、キャリア最後の挑戦としてぜひミランに…。
気が向いたら他の試合のことも書きたい。というか、ほんとにイタリア頑張れ。
サッスオーロ戦のロカテッリ
ここ数試合良いパフォーマンスを見せることができていなかったロカテッリですが、サッスオーロ戦の後半19分にチャルハノールと交代で出場すると、デビューしてからここまでメインポジションとしてプレーしていたアンカーの位置ではなく、チャルハノールと同じポジションでプレーしました。これまでにアンカーよりも前でプレーしたことはありましたが、サッスオーロ戦ではスソと一緒にカリニッチの後ろでプレーしており、これまでで一番ゴールに近いポジションでのプレーだったと思います。
・試されるロカテッリ
ロカテッリは以前から『アンカーよりもインサイドハーフのほうがいい』という意見が多く見られました。しかしモンテッラはアンカーの位置で起用し続けてきました。もちろんロカテッリにアンカーの選手としての才能を感じて起用していたというのもありますが、これにはチーム事情も絡んでいます。昨シーズンにロカテッリが台頭してきたのは、モントリーヴォの低調なパフォーマンスと大怪我があったからですが、そもそもモントリーヴォが長期離脱したアンカーのポジションは、ロカテッリともともとアンカーの選手ではないソサしかいませんでした。選手層に問題があったわけですね。そして今シーズン、ビリアが加入したことでアンカーの2番手をモントリーヴォと争うはずでしたが、相変わらず良くないパフォーマンスを見せるモントリーヴォをつきはなすことができず、セリエAでは第1節以降スタメン出場がありませんでした。そんな中、もともと選手層の薄いウイングともインサイドハーフとも言えるポジションではチャルハノールが不調、ボナベントゥーラは負傷離脱を繰り返しています。過密日程のチームでチャルハノールがすべての試合に出場することはできないので、まずはモントリーヴォがそのポジションで試されました。しかし"そこまで悪くはない"くらいの手応えしかありません。そこでとうとうサッスオーロ戦でロカテッリが試されたのではないかと思います。アンカーもインサイドハーフも出来る選手がいるとありがたいですしね。というわけで、サッスオーロ戦のロカテッリのプレーを少しだけ振り返ってみます。
・サッスオーロ戦のプレー
まずミランのカウンターのシーン。アンカーのポジションならあり得なかった位置でロカテッリがボールを運んでいます。サッスオーロのディフェンスは4人、ミランも4人と数的同数の状態。
カリニッチが裏を取る動きでディフェンダーを釣ると、そのスペースにスソが入ろうとしています。簡単にカリニッチに出すこともできますが、ロカテッリはより危険な位置であるスソへとパスを出します。
わずかにパスが合わず、チャンスにはなりませんでした。しかし良い選択だったと思います。
次にサッスオーロ戦のロカテッリで個人的にいちばん好きだったプレー。
右サイドを密集させてから左サイドへ展開しようとするシーン。ロカテッリは右サイドでのポゼッションに参加しています。
右サイドに展開されケシエがサイドでボールを持つと、ロカテッリがディフェンダーを釣るオフザボールの動きでボリーニをフリーにします。ボリーニは後ろに戻して組み立て直そうとします。
モントリーヴォにボールが渡ると、ロカテッリはこの位置でボールを貰います。
ミドルシュートにそれなりの魅力があるロカテッリはシュートを選択しました。キーパーの正面に行ってしまいましたが、このシーンはオフザボールの動き、ポジション取り、シュートの面でいいプレーでした。ポジションを上げた結果、こういうプレーを見ることができています。
最後にチームとしてもいいプレーだったシーン。
中央にカリニッチ、スソ、ロカテッリが密集。モントリーヴォからカリニッチへパスが入ると、ロカテッリが横でボールを受けます。
中央にサッスオーロのディフェンスを密集させてから、ロカテッリがサイドへ展開。結局ボリーニはシュートまで持ち込みました。局面的ではありますが、見事なポジショナルプレーでした。
・今後ポジションはどうなる?
サッスオーロ戦のロカテッリは"素晴らしい"とまではいかないものの、わりとポジティブなプレーでした。さらにチャルハノールはレヴァークーゼン時代に植え付けられたプレスの質を評価されていましたが、ロカテッリも相当荒いものの気合の入ったプレーとわりとうまいスライディングが評価できます。まだメインとなるポジションを変えたとは言えませんが、今後このポジションを何回か試されるであろうことは確かだと思います。もちろん、モンテッラが監督を続けることが前提なのですが…。
ロカテッリのことが好きすぎるから、今シーズンもカラブリア、ドンナルンマ、クトローネらと共に頑張ってほしい。
セリエA第12節 サッスオーロ - ミラン
ナポリ戦を前に確実に勝ち点3が欲しかった試合。カラブリアが怪我から復帰。モントリーヴォがアンカーの位置に入る。サッスオーロはベラルディが欠場。ただ、いまのサッスオーロではベラルディよりもポリターノの方が良い選手。
前半39分、コーナーキックからロマニョーリが決めてミラン先制
後半22分、スソのゴールで2点目
試合終了。とにかく勝てて良かった。ここ最近ロマニョーリはいいパフォーマンスを見せていたし、ゴールも決まってくれて嬉しい。ボヌッチもケシエもボリーニもいいパフォーマンスだった。セットプレーのキッカーくらいしか力を発揮できていないチャルハノールと、チームのターゲットマンになれていなかったカリニッチは良くないパフォーマンスだった。
ただでさえ新加入選手ばかりなのに過密日程でまともに練習する時間がないから、なかなか試合内容は改善されないけど、とりあえず勝てたことが嬉しい。ナポリ戦をなんとか耐えてくれれば、トリノ、アタランタ、フィオレンティーナとの試合はあるものの、とりあえずは落ち着くからなんとか頑張ってほしい。
プリマヴェーラの新星2人
ガットゥーゾ監督率いるミラン・プリマヴェーラは現在7試合を終えて勝ち点13の5位。序盤こそ躓いたものの見事に立て直し、首位アタランタを勝ち点差3で追う位置につけている。
そんな好調なミラン・プリマヴェーラを引っ張る期待の選手が2人いる。チアゴ・ディアスとリカルド・フォルテだ。ここまでチームがあげた全9ゴール中8ゴールを彼ら2人で4ゴールずつ奪っている。
・チアゴ・ディアス
特にチアゴ・ディアスのパフォーマンスは素晴らしく、とうとうガゼッタが期待の若手として報道している。ルイ・コスタも『新たなロナウド』と評価しているが、そのプレースタイルはスソを彷彿とさせ、左右のウイングとしてプレーできる。チアゴ・ディアスは夏にベンフィカからフリーで獲得した選手で、将来ミランから移籍する際に移籍金の40%がベンフィカに入るような契約になっている。クトローネと同い年の19歳で、将来的なトップチーム昇格は間違いないと思われる。
・リカルド・フォルテ
リカルド・フォルテは18歳のイタリア人。左ウイング、もしくは中央のフォワードとしてプレーする。ちゃんとプレースタイルを把握できていないが、ヘディングでも多くのゴールを決めており、点を取れる選手なのは間違いない。昨季からゴラッソが多いイメージ。それに可愛い顔してる。
プリマヴェーラの選手を記事にするのは本当に難しい。ここ最近の活躍、そしてトップチームの不甲斐ない戦いによってサポーターの期待は必然的に高まるだろうが、若手選手に過度な期待は禁物だ。現在トップチームには多くの生え抜き選手(カラブリア、ドンナルンマ、ロカテッリ、クトローネ)がいるが、それは実際には本当にひと握りでしかなく、プリマヴェーラで活躍した選手がトップチームですぐに通用するなんていうのは奇跡に近い。これからもトップチームへの救いを過度にプリマヴェーラに求めること無く、純粋な期待を持って見守り、慎重に記事にしたいと思う。というか、トップチームがもっと頑張れ。
ちなみにガットゥーゾは相変わらず怖いけど、なんか良い親父っぽくて最高
#Gattuso ringhia a fine partita...🔴⚫️
— Sportitalia (@tvdellosport) 2017年10月25日
Abbracci e sberle ai suoi ragazzi dopo #MilanEmpoli 😂⚽️🏆#SiPrimavera@acmilan pic.twitter.com/bV0DBs05Rj
セリエA第11節 ミラン - ユベントス
絶対王者ユベントスをホームに迎えた一戦。ムサッキオではなくサパタ。カラブリアが怪我のためアバーテ。昨シーズンのように面白い試合を期待していた。
ミランはキエーヴォ戦と同じシステム。ビルドアップはR・ロドリゲスを入れてロマニョーリとサパタの3人+ビリアとケシエ。前半開始から積極的なプレスでユベントスのビルドアップを混乱させていた。試合の入り方は素晴らしかった。
前半23分のユベントス先制のシーン。ディバラを見なければいけないのはビリア。絶対にこの位置でディバラをフリーにしてはいけないのだが…。
簡単にマークを外されディバラはフリーに。最後はイグアインのゴールでユベントス先制。ビリアは今日何度もディバラを自由にさせて、さらに軽率なミスが目立った。
後半18分のユベントス2点目のシーン。ビリアに代わってロカテッリが入っているが、こちらもこの位置でディバラをフリーに。ディバラがスルーしたのをイグアインに決められて2点目。結局ディバラは止められなかった。
前半は失点こそしたものの、悪くはない内容だった。ちなみに前半終了間際のカリニッチのシュートがバーに当たったシーンはブッフォンを褒めるべきだ。この試合のカリニッチのパフォーマンスは良くなかったが、同時にキエッリーニはほんとうに素晴らしかった。キエーヴォ戦のパフォーマンスはまったく評価されず、ユベントス戦でカリニッチだけが過剰に批判されてるのはあり得ない。
後半の不甲斐ない戦いはモンテッラによって何かしらの修正ができたはずだ。前半は勢いで得点に迫るシーンもあったが、後半のミランはただサパタがボールを持たされているだけのチーム(サパタ起用はディフェンス面ではポジティブな印象だったが…)で得点の匂いがまるでしなかった。非常に残念ではあるが、チームに何かしらの刺激を与える必要があるのかもしれない。
セリエA第10節 キエーヴォ - ミラン
ちょっと忙しかったので記事を書くのが遅くなってしまった。ボヌッチの退場によってドローに終わったジェノア戦から立ち直り、ユベントス戦前に勝ってチームの士気を上げておきたかった試合。ボヌッチ不在でロマニョーリが3バックの真ん中。
・新?システムの4-3-3改
まずシステムですが、公式では3-5-2と表記されていますが、3-4-2-1でもあり4-3-3でもあります。試合前の表記でしかないのでなんでもいいのですが、チームの動きは実質4-3-3に戻りました。
ビルドアップ時はロマニョーリ、ムサッキオ、R・ロドリゲスで最終ラインをつくり、その前にビリアとケシエを置く形ですが、これは4-3-3のときにコンティが上がってR・ロドリゲスが降りてくる動きとまったく一緒です。そしてR・ロドリゲスがキーマンの1人に戻りました。「コンティとR・ロドリゲスのための3バック」なんてよく言われてたけど、ここまでの数試合を見てると正直WBで出場するよりこっちの方が組み立てに参加するのとサイドチェンジが活きるのでいいんですよね。
このように状況に応じて4バックにもなります。以前の4-3-3との違いは超攻撃的なコンティが怪我で離脱しているので、カラブリアはコンティほど上がらずスソをサポートする役割は主にケシエが担っているところと、ボリーニが一応WBなので守備意識が高いところ。一応ディフェンスのバランスはこちらほうが取れている…形としては。
・カリニッチの活躍
A・シウヴァ、クトローネの人気が高いのでカリニッチがスタメンで出場すると不満気なミラニスタが多いですが、キエーヴォ戦のカリニッチはチームへの貢献度がとても高く、素晴らしいプレーでした。多くの時間で積極的にプレスをかけ続け、ポストプレーのレベルも高く、チームとしてもカリニッチを基準点とする意識がよく見られました。
ミランの先制点。ムサッキオからカリニッチをターゲットにしたボールが出る。
カリニッチが競り勝ち、チャルハノールへボールが渡る。チャルハノールはボールを失ったが、スソのところにボールが渡り見事なシュートで先制。とてもシンプルな形で先制点が生まれた。
Patience is a virtue ⚽ pic.twitter.com/1hl1L0I5tC
— AC Milan (@acmilan) 2017年10月26日
そしてカリニッチ自身も43本のパスを最後見事なタッチからゴールを決めた。
・スソをどう捉えるべきか
実質4-3-3に戻ったことでスソが得意のサイドでプレーすることができています。ミランの先制点、2点目のオウンゴール、3点目のカウンターの起点、4点目のラストパス…。どのゴールにもスソが絡んでいるので、この試合のベストプレイヤーだったことは間違いありません。ただチームとして崩しの最終局面はほぼスソに任されている(スソしかないとも言う)にも関わらず、未だに好不調の波が激しく、チームの結果に直結する選手のパフォーマンスにムラがありすぎるのは不安要素でしかありません。クオリティは間違いない選手なので、もうワンランク、ツーランク上のレベルに成長してほしいのですが…。
試合全体を通してしっかりと前からプレスをかけ続け、久しぶりに快勝することができてとりあえずは良かった。ただ、4-3-3改になってチームとしてこれからより高いレベルへと向かっていく、という手応えはほとんど無かった。