今季のミランについて① ~システム論~
昨季モンテッラの後任としてミランの監督に就任したガットゥーゾ。就任直後は不安定な戦いでしたが、年明けからサイドチェンジを多用するシンプルなサッカーで調子を上げ、なんとかヨーロッパリーグ出場権を得ることができました。今季も継続してガットゥーゾ・ミランとしてスタート。しかし、日を追うごとにその監督としての手腕に疑問を持たざるを得なくなっていき、不満は溜まっていき、爆発寸前まで来てしまいました。せっかく年末ですし、今日から何回かに分けて今季のミランについて思うことをポツポツと書いていきたいと思います。第一回目は今季のミランが採用するシステムについて。
・4-3-3でスタートしたミラン
昨季からの継続で今季もミランは4-3-3を基本システムとしてスタートしました。今季は後ろから丁寧に繋ぐサッカーを目指している感のあったミラン。しかしビルドアップはまったく組織として整理されず、開幕試合だったナポリ戦ではボロボロでした。さらに中途半端に繋ごうとして中盤でボールを奪われる展開が多くなったため、ディフェンスもボロボロ。セットした状態でもビリアの両脇のケアに関してもなにも策はなく。唯一昨季よりも向上した点といえば、イグアインが加入したことによる個の質の向上。しかしこれはガットゥーゾの手腕とは関係なく。私的には第7節サッスオーロ戦(4-1で勝利)、戦い方がはっきりとしているサッスオーロ相手に全く何も策もなく、やられ放題だった前半の出来を観て、ほとんど諦めにも似た感情になりました。4-3-3でスタートして、点が入らないと後半に4-4-2へと変更して運よく勝ち点を拾っていたミラン。そしてガットゥーゾは4-3-3から4-2-2へと基本システムを変更しました。
・4-4-2の利点
まず4-4-2で得られる最大の利点として考えられていたのは、イグアインとクトローネの共存でした。これには私もミランでいちばん可能性を感じていました。なぜなら、クトローネはエリア内で勝負するタイプ、イグアインはエリアの外で待ったり、下がって受けたがる選手です。実際4-4-2でスタートした第10節サンプドリア戦ではこのコンビはわりとうまくいっていましたし、大きな可能性を感じさせました。それからビリアが離脱して、中盤がケシエとガットゥーゾの大好きなバカヨコのコンビになったことで、後方からの繋ぐビルドアップへの固執が緩み、セカンドボールをバカヨコに拾わせる戦い方に若干ではありますがシフトチェンジしたので、不用意なミスは序盤より減りました。それでもまだまだ脆さが目立っていたので、普通ならこれをどう成熟させていくか、という段階なのですが・・・。
・問題を放置するガットゥーゾ
それでもガットゥーゾの仕事はシステムを変更するまででした。ミランの4-4-2は成熟していくどころか、どんどんと悪化していきました。その理由はいくつかありますが、まずイグアインが不貞腐れているか、単純にプレーの質が悪い状態が続いている(これは次か、その次の記事で書きます)こと。そしてスソ頼みによる守備免除。それと怪我人の多さ。他にも色々ありますが。よく最後の崩しだけは選手に頼らざるを得ない、というような話がありますが、ミランの場合ビルドアップから崩しから守備組織まで何から何まで組織化されているようには見えず、選手の質だけで戦っているように見えます。ある程度の選手はいるので、拾える勝ち点もほかの中堅クラブよりは多いかもしれませんが、そんなチームでは高いレベルに行けるわけがありません。実際、すでに大きな失敗をしてしまいましたし・・・。
・もはやシステム論は意味を持たない
最近また4-4-2ではなく4-3-3に戻すべきだというようなメディアやサポーターの声が多くなってきましたが、もともと4-3-3がうまくいっていなかったことを思い出さなくてはなりません。ボコボコに叩かれていたモンテッラ二年目は、3バックを求めるサポーターの声もあってシステム変更して、うまくいかずなかなか勝てませんでしたが、少なくともモンテッラは問題をある程度まで認識して修正しようという意図は見て取れました。そして昨季はほとんどが新加入選手で、相互理解が深まるまでに時間がかかることは明らかでしたが(大型補強をした多くのクラブがそのシーズンをうまく入れていないことを考えてみてください)、今季はその心配はなく。そしてここまで積み上げた勝ち点は昨季と比較しても3しか違いがありません。4位という順位は周りのおかげでしかなく、とても虚構的です。「4-3-3だからうまくいかない」や「4-4-2では勝てない」というような議論は、もしガットゥーゾが少しずつでも問題を修正しつつ、チームを戦術面で向上させるだけの手腕があるのであれば成立しますが、4-3-3でも4-4-2でも、それは今のミランには選手の配置変換でしかありません。システムを変更することで誤魔化しつつ、なんとか運よく勝ち点を拾えてるだけの状況では、このようなシステム論は本質的には意味を持たないと思います。
来季もガットゥーゾで安心かと言われればそんなことはなく、就任してからここまで良い仕事をしてくれているけど、一年通してCL出場を目指すならもう何段階かレベルを上げなければいけないのはアーセナル戦前後あたりから明らかで、これまでのキャリアでそこを示せていないのはやっぱり今でも不安。
— k (@calciostyleoe) April 2, 2018
昨季の段階で不安視していたことが現実に起こってしまい、とても残念です。私的には、ここ数年でいちばん不満なシーズンです。