ベロッティとベルナルデスキの現在

イタリアがW杯を優勝してから10年以上が経った。優勝国として臨んだ2010年、EURO準優勝国として臨んだ2014年、どちらもグループリーグ敗退。一部で史上最弱メンバーと言われた2016年EUROは、コンテ監督のもと見事なサッカーを披露して、いい意味で裏切りこそしたが、結果としてはベスト8止まり。長いことタレント不足が叫ばれていた。

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そんなイタリアは現在、将来が期待される若手が多く出始めている。それはここ10年言われてきた"将来有望"な選手とは違い、本気でワールドクラスになれる可能性を秘めたタレント達だ。ブッフォンの後継者と呼ばれた選手がことごとく期待を裏切り続けたGKにはドンナルンマという超逸材がいる。DF陣は現在ボヌッチというワールドクラスがいるが、ロマニョーリやカルダーラなどがそれに続く可能性は十分あるだろう。中盤にはすでにヴェラッティという準ワールドクラスがおり、今夏の去就次第で真のワールドクラスに進化できるはずだ。そしてアタッカーはベロッティとベルナルデスキが筆頭候補だ。個人的に大好きな選手である、今夏毎日のように移籍の話が出てくるこの2人のアタッカーを、今回は取り上げてみたいと思う。もちろんここで挙げた選手が伸び悩む可能性もあるし、ここで挙げなかった選手が急成長する可能性もあることは言っておきたい。

・アンドレア・ベロッティ

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1993年12月20日生まれ。昨シーズン、トリノで本格的にブレイクしたストライカーだ。26ゴールを決めたことからわかるように決定力はかなり高く、右足、左足、頭とどこでも点を取れる選手。身長は181cmでそれほど大きくはないのだが、その大きすぎる背筋を見てもわかるように、フィジカル能力に優れており、空中戦にも強い。シュート、ポストプレー、スペースメイク、飛び出し、すべてを平均以上にこなしてしまう恐ろしい選手だ。そしてなにより、献身性が素晴らしい。前線からプレスをかけ続けるのはもちろん、状況をみて自陣深くまで相手選手を追いかける場面も何度もある。とにかくあらゆる場面でチームを救ってくれる選手だろう。

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そんなベロッティは今夏様々なクラブから興味を持たれている。マンチェスター・ユナイテッド(ルカク獲得が決定的で噂は消滅)、チェルシーミランあたりが本格的に獲得を狙うクラブだ。しかし、どのクラブとも具体的な話が出てこない。その原因はトリノ側が契約解除金として1億€を一貫して求めているからだ。適正価格から大きく離れた1億€なんて額を簡単に払う、または払えるクラブなどほぼいないだろう。契約年数や将来性を加味しても、高くて6000万€くらいだと個人的には思う。

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ベロッティは現在23歳。年齢的にはそろそろ次のステップを踏みたい。これはベルナルデスキや他の若手選手にも言えるのだが、出場機会はもちろん大事で、試合に出ることで成長もできる。しかしワールドクラス級の選手になるには、若いうちからより高いレベルの環境に身を置かなければならないと思う。

ベラルディを例にあげる。彼はユベントス保有権を持っていた頃、何回も絶対王者のチームへ加わる可能性があった。しかし、本人が出場機会の保証されない環境を嫌い、サッスオーロに残り続け、とうとうユベントス保有権を手放してしまった。僕の中では彼も、かつてはワールドクラス候補生だったが、ここ数年明らかに成長速度が遅く、2年前とほとんど変わっていないように感じる。今夏でローマやインテルなどへの移籍の話が出ているが、報道されているような4000万€の価値などない。もし今夏も移籍せずにサッスオーロに残るのであれば、彼がワールドクラスになれる可能性はほとんど無くなるだろう。これはデ・シリオにも言えることで、彼がいちばん成長したい時期にミランは中堅クラブに成り下がっていた。いい例ではヴェラッティがすぐにパリSGに挑戦して、見事にスタメンの座を勝ち取り、急速に成長した。ディバラも出場機会が保証されていない環境で見事にエースへと成長した。もちろん絶対条件ではないものの、レベルの高い環境で挑戦することはかなり重要なのではないだろうか。

話をベロッティに戻すと、トリノは明らかにビッグクラブではない。そして報道によると、トリノ側はまだ契約年数は十分残っているにも関わらず、契約延長オファーを出す用意があるという。これは今後もトリノのプロジェクトの中心としてチームに残ってくれ、という意味だろう。つまりこれから数年で売るつもりはない、ということになる。もしベロッティが契約延長するのであれば、先ほど言ったベラルディのようになる可能性が高い。イタリアサッカーファンとして、これだけは避けたいと僕は思う。しかし、今夏放出される可能性は限りなく低いし、本人もトリノと揉めるのは嫌だろう。来夏で移籍の可能性はあるし、遅すぎることもないのだが、できれば早めに挑戦してほしい。

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国内で移籍するならユベントスミランだろう。そして同じトリノのライバルクラブよりも、本人がミラニスタであるということを含めてミランがいちばん良い選択肢ではないだろうか。現時点でミランユベントスと同じレベルのビッグクラブとは言えないが、明確なプロジェクトのもとビッグクラブへと戻るために動き出している。クラブとしての挑戦と選手としての挑戦、ふたつの要素がベロッティを成長させるだろう。とにかく今夏、もしくは来夏で新たな挑戦をしてほしいと強く思う。

 

フェデリコ・ベルナルデスキ

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1994年2月16日生まれ。フィオレンティーナの生え抜きエースだ。現代のファンタジスタで、見ていて楽しい選手だ。スピード、パワー、テクニックが高いレベルで備わっており、ハイセンスなラストパス、切れ味鋭いドリブル、正確なシュートと、攻撃面のセンスに溢れている。もともとはウイングの選手だが、2トップの一角やトップ下、ウイングバックまで経験しており、多くのポジションでプレーできるのも売りだ。ベルナルデスキも守備をサボらず、チームに貢献できる選手である。

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ベルナルデスキは現在、ユベントス移籍が近づいている。フィオレンティーナの契約延長オファーを拒否し、今夏での退団を希望している。学年はベロッティと同じなので、先ほどの話のように、選手として来シーズンはビッグクラブに挑戦したいという気持ちはとても良いものだ。フィオレンティーナは今夏チーム解体が進んでおり、新たなサイクルを始めようとしている。チームはその新たなサイクルの中心にベルナルデスキを据えたいのだが、出ていくのであれば今夏がいちばん良いタイミングだろう。そして移籍先としてユベントスというのはかなり良い選択だ。ただやはり問題になっているのは、フィオレンティーナの生え抜きエースがユベントスに移籍するというのは、歴史的にファンにとっては裏切り行為に値するからだ。僕も地味にヴィオラは好きだし、この移籍は感情的には最悪だ。しかし来シーズンもフィオレンティーナに残るのは、良い選択ではない。

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国内でユベントス以外の移籍先となると、ベルナルデスキもベロッティとほぼ同じ理由でミランがいちばん良い選択肢となるだろう。ただ、ベルナルデスキに関してはどうしてもユベントスがいちばん良い選択肢と言わざるを得ない。かなり複雑な感情だ。ちなみにインテルは論外だ。

 

もちろんいろんな選択肢があり、どれが正しいかなんてない。それでもイタリアサッカーの未来の為にも、できるだけ早めにビッグクラブで挑戦してほしいし、そのクラブがミランであるなら最高だ。これからも2人を注目し続けたいと思う。