【組織がないなら殴り合え】セリエA 第11節 ミラン×ラツィオ

・はじめに

前節SPAL戦でなんとかピオーリ体制初勝利をあげたミラン。相変わらずのハチャメチャフリーダムフットボールっぷりで地獄のような内容だったが、勝てたことはチームにとっては大きい。今節の相手は近年継続したシモーネ体制で安定した結果を残しているラツィオラツィオの組織をどこまで個で殴れるかが勝負の分かれ目となる。

 

・フォーメーション

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ミランはケシエに代わってクルニッチ、負傷したスソとムサッキオに代わってカスティジェホとドゥアルチがスタメン。ラツィオはいつものメンバー。

 

・前半/ミランのボール保持

ピオーリ体制になってからテオが高い位置を取りCBと右SBで3バック化+ダブルボランチによる後ろからの3-2ビルドアップが基本となっていたが、この試合では後ろから繋ぐ意識は薄く(後ろから繋ぐ場合基本テオは通常の位置で4-1ビルドアップ)、前線の選手へのロングボールによってボールを進めていくことを目指した。セットオフェンスの質がかなり低いピオーリのミランだが、後述するようにできるだけ攻守を相手陣内でプレーすることを目指し、ラツィオのビルドアップをマンマーキングでハメにいくことである程度殴りあう覚悟だ。これに関してはミランの現状と対戦相手を考えれば納得できる戦い方だった。

 

・前半/ミランのボール非保持

ミランラツィオの後ろからのビルドアップに対して前からハメにいく姿勢をみせる。ラツィオの両脇CBに対してWGのカスティジェホとチャルハノールがサイドへの誘導プレッシング、WBにはSBがそのまま前に出て対処、IHに対してはマンマーキングでついていく。アンカーのルーカス・レイバに対してもできるだけベナセルが前にでて対処。かなり前がかりなプレッシングをみせた。

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前半20分くらいまではミランのプレッシングが機能、ボール奪取からチャンスをつくることもできていた。16分頃からラツィオはビルドアップの逃げ道となっているセルゲイへのロングボールで前進を目指し始めるが、肝心のセルゲイが思ったほどボールをおさめることができず苦戦。20分間はミランの時間が続いた。

 

 

20分を過ぎてくると前がかりのミランに対してアルベルトがCB-MF間でボールを受ける動きをみせ始める。

 

ラツィオはビルドアップで左WBのルリッチをうまく使い始める。ラツィオ得意の形からの攻撃に対してミランはカウンターを仕掛けるが、ボールを失うとインモービレがテオのスペースへポジショニング。そのままテオのスペースを使われてあっさり失点。ラツィオが先制した。

 

 

・後半/ミランのボール非保持

前半のうちにバストスのオウンゴールで同点にしたミラン。後半も似たような展開が続いたが、ミランの前がかりプレッシングは体力的な問題で試合終盤まではもたない。ある程度後ろから繋げるようになったラツィオは、60分にセルゲイに代えてパローロを投入することで守備のバランスを整え、得意の左サイドアタックがあまり機能しなくなってきた為(コンディションの問題もありそうだが)インモービレに代えてカイセドを投入。セルゲイが担っていたビルドアップの逃げ道という役割とターゲットマンとしての役割を期待した。同点のまま迎えた83分にミランのプレッシングの甘さからカウンターを食らってラツィオが勝ち越し。そのまま試合終了でミランは鬼の3連戦を黒星のスタートとなった。

 

 

・おわりに

以前の記事で書いたように、ピオーリのミランは選手の配置も、個々のポジショニングも動きも、全体としてのリスク管理もグダグダだ。そんなグダグダを前提とするなら、ピオーリは最善の選択をとっているといえるのかもしれない。それでも何度も言うように、昨季でガットゥーゾとお別れしたのはチームの戦術的、あるいは技術的な進歩のためだ。こんなことではチームの進歩はあり得ないではないかと、もはやどこにぶつけたいいかわからないモヤモヤを、少なくともあと半年以上は抱きながら観戦することになりそうなのが非常に憂鬱である。