【前半でプラン変更 4-3-3でもぎ取れ勝ち点】セリエA 第3節 エラス・ヴェローナ×ミラン
はじめに
代表ウィークを挟んでのジャンパオロ・ミラン3試合目。これまでのジャンパオロであればこの時期を使って少しでもチームの完成度をあげていくところだが、ほとんどの主力が代表に招集されてしまい、コンディション不良のままギリギリでチームに戻ってくるミランのようなチームではそれは難しく。前節のように、昨季の戦力を中心にある程度誤魔化しながら勝ち点を拾っていくような試合になると予想された。メディアではシステムを4-3-3にするのか、いやいやまずは4-3-2-1だろう、などと大いに盛り上がっていたが、この試合でもジャンパオロの選択はあくまで4-3-1-2であった。
フォーメーション
ミランは前節と同じく4-3-1-2の亜種。最終ラインは同じメンバーで、アンカーにはビリアが入る。前節はカスティジェホが入ったトップ下にはパケタが入って、スソとピョンテクのコンビも同じ。
昇格組であるヴェローナは3-4-1-2を採用。ここまで1勝1分といいスタートを切っている。
この記事はジャンパオロの基本的なプレーモデルを踏まえた分析になります。
前半/ミランのボール保持
ミランとヴェローナの選手の配置的に中央はがっつり噛み合わせが合うため、ある程度ボールを持ちやすいSBからボール前進を狙うミラン。特にスソがサイドに流れていることもあり、WBや中盤からのプレッシャーが遅くなるカラブリアはボールを持ちやすい。ミランはカラブリアからズレを作りつつ、いい形でパケタにボールを渡したい。
この試合では前節のようなスソのいる右サイドのオーバーロードとアイソレーションによるアタックというよりも、開幕節のように(つまりジャンパオロ本来の形のように)ヴェローナの中盤を引き出して、その裏でパケタやスソがボールを持てるようにしようという意図がなんとなくみえた。ヴェローナはライン間でプレーしようとする選手にはCBが前へ出て対応。
前節よりもジャンパオロ本来の形で、スソとパケタが中央ライン間で受けて崩そうという意図がなんとなくみえた。が、無駄に中央に固まりすぎていることが多かったので、この動画の2つ目のようなシーンではパケタはボールより前へ飛び出すようなプレーが欲しかった。 pic.twitter.com/pRg941jzTr
— k (@calciostyleoe) September 17, 2019
開幕節のスソもあったが、パケタがボールを受けたあとに横のビリアに出せれば前を向けるし、そういうプレーが出来てくればジャンパオロのサッカーの形が見えてくるが…。 pic.twitter.com/YC0V0evATZ
— k (@calciostyleoe) September 17, 2019
ここまではスソが基本的には右サイドへ位置しているが、前節よりも中央でのプレーも意識しているようにみえ、どうにか中央、あるいは右サイドから崩そうという狙いがあったが、まだ具体的な崩しのアイデアを共有できておらず、なかなか崩し切ることはできないという印象だった。前半21分にヴェローナのステピンスキが退場したことによって、ミランはこれらの用意してきた狙いができなくなる。
退場者を出したヴェローナはすぐさま5-3-1で完全撤退。ミランが使えるスペースはほとんど無くなることになる。
ステピンスキ退場後、ケシエがコースをあけて、アンカー脇でボールを受けるスソとパケタの動き pic.twitter.com/qqmLMkl8Ez
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無駄にボールに寄らずマンツーマン相手を試合から消すポジショニングと、無駄にボールに寄ろうとするケシエにコーチングするビリア pic.twitter.com/Uc2Ij2SdUM
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やはりスペースを消されるとより攻略が厳しくなってくるミランにおいて、パケタは徐々に自分がなにをすべきかがわからなくなっていき、試合から消えていったまま前半は終了した。
後半/ミランのボール保持
後半開始とともにパケタに代えてレビッチを投入したミランはシステムも4-3-1-2から4-3-3へと変更。このシステム変更により、5-3-1で徹底的に守るヴェローナ相手にパケタに中央でスペースを与えるように動いていたチャルハノールやケシエがより高い位置で攻撃に絡むことが可能。基本はWGとSBのコンビにIHが絡むことで崩していこうという狙い。ミランでいちばんチャンスになりやすいスソからのクロスは、前半はピョンテクとたまにパケタがエリア内で待機しているくらいだったが、後半には両IHとレビッチまでもが絡むことができるようになった。5-3-1で守るヴェローナに対してバランスよく選手を配置して、ミランはなんとか得点をもぎ取りたい姿勢をみせた。
このシステム変更によってミランはPK獲得、ピョンテクが初ゴールを決める。ヴェローナを押し込んだ状態で左右にボールを動かし、中盤3枚をスライドさせてスペースを生み出そうとするミラン。ボールが左右に動くたびにピョンテクのマークの受け渡しをするヴェローナの2CBと、エリア内に入ってきているレビッチをマークするCBは、中央バイタルエリアに入ってくるチャルハノールを潰しにいけず、チャルハノールは一瞬前を向く余裕ができる。そこからピョンテクとのワンツーから放ったシュートがヴェローナCBの手に当たってPKを獲得。
4-3-3に変更したことでIHのチャルハノールがより攻撃に関与できるように。WGのレビッチも含めエリア内の人数も増やすことができ、結果的に中央スペースで受けるチャルハノールへの潰しが遅れてPK獲得。一瞬で潰しにくるCBの位置を確認したチャルハノールとビリアのパスはセットでお見事。 pic.twitter.com/3B54sJCeAk
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先制したミランは無理することなく、終了間際にカラブリアの退場というアクシデントこそあったが、そのまま試合を終わらせて2連勝。まずまずの結果で次節はダービーを迎えることになる。
おわりに
試合開始時はジャンパオロの4-3-1-2で中央を攻略する狙いをみせたミランだったが、ヴェローナに退場者が出て5-3ブロックで引いて守られてからは攻撃が機能せず。後半から4-3-3にシステムを変更して選手の配置と役割を変えたことでなんとか勝ち点3をもぎ取った。代表ウィーク明けで、戦術浸透にも選手のコンディションにも不安があるなかで勝てたのは大きい。さあ、これからジャンパオロのゲームモデルも少しずつチームに浸透していくか?というところで次節はコンテ就任のインテルとのミラノ・ダービー、その次はアウェーで難敵トリノ、その次はまだ結果こそ出ていないが怖い存在であるフィオレンティーナ。戦術理解を深めながらも、この3連戦でなんとか2勝はしたいところ。ジャンパオロにとって最初の試練となりそうだ。
第1節 ウディネーゼ戦
第2節 ブレシア戦