ミラン、来季の新監督人事について

この記事は最終節の結果以前に書いているので、公開されるときにミランがCL出場を決めているのか、今季も逃してしまったのかはわかりません。ですが、結果にかかわらずガットゥーゾ続投はありえないものとして、噂になっている監督たちについて個人的な意見を書いていきます。(結果的にチャンピオンズリーグ出場権は逃したので少し事情は変わってきますが)

まず今季の結果にかかわらず、来季もCL出場を目指すチーム作りになることは間違いありません。なので長期的視点で優勝を目指すプランももちろん大事ですが、まずは安定してCLに出場するチームをつくる、という中期的視点が大事です。そしてチームはそうそうお金を使える状況にない、ということも考慮するべきです。もちろん現スカッドは間違いなく優勝できるような質も層もありません。ですが、4位以内に入れるチームではあります。近年、選手獲得にお金をかけてきたミランですが、監督人事に関してはそうではありません(結果的に解任祭りでお金を使っているかもしれませんが)。お金をかければいいというわけではありませんが、そろそろモダンフットボールを理解し、本気を出しましょう。その監督にはどのようなゲームモデルがあり、どのような結果を出してきたのか。そしてその監督のゲームモデルに対して、クラブ側がどれだけ周辺状況(選手の質、コーチやスカウト人事、サポーターの満足度)をコントロールできるか。その噛み合わせのうえで最適な人物を選考していくべきです。例えばグアルディオラがフリーだったとして、彼のゲームモデルや結果は誰もが知ることろですが、ミランの状況を考えると選手の質に関してクラブ側は間違いなくコントロールできません。そうなると、肝心のゲームモデルを根付かせることはできません。間違いなく失敗(少なくとも成功はなさそう)します。

などなど、いろいろ考えるべきことはありますが、ここからは個人的になんとしてでも狙いにいくべき監督、そこが無理だった場合に狙うべき監督、そこも無理だった場合の監督(ここを選ばなきゃいけなくなった時点で個人的には少し残念ですが)にわけてみたいと思います。(各監督に対する最後の一文は適当です)

 

・絶対に狙いに行くべき監督

 アントニオ・コンテ

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わりと否定的な意見をよく聞きますが、そのチーム設計、戦術的アプローチに関してはイタリア人監督のなかではアッレグリアンチェロッティと並ぶ名将です。これまでユベントスチェルシーで結果を残してきましたし、イタリア代表では史上最弱などと言われていたチームでベルギーやスペインを倒してベスト8まで進みました。フロントと補強戦略でもめたりする印象が先行しすぎていますが、本人が戦力を求めることとは別に、実は現有戦力に合ったチーム設計がロジカルにできる超優秀な人です。インテル監督就任が現実的らしいですが、結婚式の誓いのキス直前で乱入してくる男みたいになってでも狙うべきだと思います。ライバルチームにコンテが就任するのはミランにとっては最悪という面もあるので。(チャンピオンズリーグ逃したことで財政がやばいのと、もう絶対来ないなという感じで個人的に少しトーンダウン)

 

マッシミリアーノ・アッレグリ

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もう説明不要だと思いますが、イタリア人監督という枠ではなく世界的な名将です。近年しっかりとセリエを観てきた人たちからすれば、結果はもちろんですが、チーム全体でのゾーナルプレッシングによる守備体系構築をベースに、相手チームの弱点を的確に突いていく攻撃、柔軟な(時に変態的とまでいわれる)戦術対応等々、すごいとしかいいようがありません。この人も異常なくらい現有戦力を最大限に活かすチーム設計ができてしまう監督です。というよりも、当時あの戦力でバルセロナを抑えていたのをリアルタイムで観ていたミラニスタには説明不要だと思います。とにかく土下座してでも帰ってきてもらうべきです。今季限りでユベントスを退団しましたが、すぐにイタリアの別チームを率いるということはなかなか想像できません。ですが、たとえ円満に別れたカップルだとしても、恋人と別れたその寂しさの中、かつての恋人から声がかかればとりあえず会ってみようかな、となるかもしれない、的な感じでとりあえず狙うべきだと思います。

 

・次に狙うべき監督

 ・マウリツィオ・サッリ

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そもそもあの成績でチェルシー退任が噂されているのがすごいですが、もしそうなったら狙うべき監督だと思います。サッリのゲームモデルとして、ミランの選手の質では難しいのではないか、と思いがちですが(まったく心配していないわけではない)サッリもイタリア人監督らしくベースにあるのはボールを基準にしたゾーナルプレッシングです。サッリ・ナポリの3シーズンの結果を見てもらえればわかるように、失点数が多いチームではありませんでした。そのうえでのショートパス主体のポジショナルな攻撃を構築していきます。サッリは補強によってピースを埋めていくというよりも、現有戦力を自分色に染めていくことに非常に優れた監督という印象があります。絶対に狙いにいくべきだとした監督たちに比べたら多少の不安はもちろんありますが、かなり優秀な監督だということに間違いはありませんし、うまくいけば彼のゲームモデルは世界的に評価されるものなので、チームのイメージ(広告的な問題)としても好影響なのではないでしょうか。結果を出しても評価されない状況をうまく使って、優しく口説きにかかり、長期的な愛を提示すれば可能性はあるのではないでしょうか。

 

シモーネ・インザーギ

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そろそろラツィオからのステップアップを考える時期(いまのミランがステップアップとして成立するのかは置いておこう)にきている監督。ラツィオではCL出場の夢こそ叶いませんでしたが、5-3-2ブロックでのゾーナルディフェンスと、3バックの特性を生かした最終ラインでのマンマーキングをミックスさせた守備体系の構築は見事で、そこから繰り出される左サイド偏重+アイソレーションを利用した攻撃というのが特徴です。個人的見解でいえば、4-5ブロックを敷いてサイドチェンジを多用していた昨季のガットゥーゾの上位互換といった印象です。それ以外のアプローチを観たことがない、というのが不安ではありますがラツィオでの仕事は評価するべきで、ミランではその先の新たなアプローチを観てみたい、という感じです。本人もステップアップを望むのであれば、兄貴が監督として叶えられなかった夢、そしてシモーネ自身もラツィオで叶えられなかった夢をミランで実現しようぜとかなんとか言って説得するべきだと思います。

 

 ジャン・ピエロ・ガスペリーニ

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近年のアタランタ躍進の立役者。シモーネ・ラツィオのゾーナル守備と最終ラインのマンマーキングミックスの守備体系とは違い、守備は人基準で中盤によるボールホルダーへのアタック以外、後ろはマンマーキングを採用しています。スペース管理というモダンフットボールの流れからは離れますが、非常に興味深く、結果も残しています。個人的にその特殊な守備体系と前線の選手を残した攻撃はミランで観なくてもいいかな、というような気もしますが、優秀な監督であることは間違いありません。チャンピオンズリーグ出場権獲得したチームを辞めるのか疑問ですが、インテルで即解任された恨みをミランで晴らそうぜ、とかなんとか言って狙うべきでしょう。

 

・そのまた次に狙うべき監督

・ディ・フランチェスコ

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個人的にはそこまで推してはないのですがサッスオーロ時代からしっかりと結果を残してきた監督。4-3-3を基本として縦へつけてからダイナミックに攻撃するチームをつくる印象が強く、攻守においてしっかりと体系化できるのではないでしょうか。正直ディ・フランチェスコが来たから4位以内いける!みたいにポジティブにはなれないのですが、優秀な監督なのでチェックしておくべきかと。おそらくローマを解任されてから暇してるでしょうし、軽い感じで誘えば来てくれるのではないでしょうか。

 

個人的な希望はこの辺りです。ジャルディムみたいな話もありますが、あの躍進したチャンピオンズリーグでの数試合しか観ておらず情報が少ないので評価できません。それとレオナルドが辞任、カンポスが就任するというような話もあり、クラブの方向性をはっきりさせてから、もう一度考えてみなくてはなりません。なんにせよ、他クラブよりも早く動き、希望を持てる監督を連れてきてから人員整理をしていってほしいですね。

今オフは確か特に大きな国際大会も無いので、まずは今季のミランガットゥーゾについて振り返りつつ、ここで挙げた各監督の戦術なんかもゆっくり分析しつつ、勉強して知識を深めていければ、と思います。

今オフもお付き合いいただければ幸いです。

 

書きました。